計画地は、浅草の下町感が残る気の抜けた空気感。
街の大きな変化を良い意味で拒んできたことを感じる。
路地に入ると、敷地から越境して置かれた自転車・プランター・室外機。
各々の屋上にはペントハウスがあり、物干しや洗濯物・植物などが無造作に置かれている。
通常、NGな行為が、この街では受け入れられ、本来日本人が持つ寛容さとも捉えられる。
このような街の良さを路地でとどめず、住宅内部まで引き込むことが、この地での自然なあり方である。
そこで、周囲の路地空間を階段室によって縦に引き込み、屋上まで行くとペントハウスのように分節されたテラス空間にたどり着く。
周囲の環境から採光を望めなかった理由から、縦の路地をあえて中央に配置することで、採光と換気を室内にバランスよく届け、家族の様子も感じれるようにした。
細かく分節され、縦に積まれたこの建物は、浅草の路地が延長したように屋上まで続き、そして周囲の古い家屋と同調するように、さりげなく街の一員となっている。