横浜本牧エリアの整然と整備された住宅街。 国土地理院地図で過去を遡ると、良好な硬い層をもった斜面地であったことが分かる。 そこを盛土によって道路から2.5m程上がったところを宅盤とした住宅群。
疑いもなく、無意識にその地盤レベルに建物を載せようとする行為は、周囲の住宅を見ても極自然な思考である。
しかし、施主の要望を叶える為に、一旦先入観を置き、敷地の読み取りを再度見直すことからスタートしている。 周囲の住宅を見渡すと、駐車場を確保する為に、道路レベルまで切り下げられているが、それによって外構空間は段差によって分断され、中には庭空間を確保する ことができず、住宅として大切な空間を切り捨てられているものもある。
そこで、地盤を当時の斜面に戻すことで解決を見出すこととしている。 まず、建物はその斜面に落とし込み、敷地全体が斜めのままの外構は、そこが駐車場であり、庭でもあり、各々は都合よく境界を持たずに役割を果たす。
また、建物内部でも「斜め」で解決を図る。 施主との長い基本計画の中で、ここはどうしてもこの程度の面積が必要といったことでなかなか折り合いがつかないことはよくあることだが、 一つの大きな壁を斜めに倒すことで、1階のL・Dは高さとフットプリントを大きく、水廻りはフットプリントを小さく、そして2階では寝室をできるだけ広くといった 要望を効率よく一つ一つ叶えることが可能となった。 少しの変則的な操作によって、全ての空間が成立していくといった考えである。
都心や横浜など、敷地面積や条例等が益々厳しくなり、ある意味設計者としての息苦しさを感じている。 しかし、ここでの経験は今後の解決策の可能性に期待を持てたプロジェクトとなった。
フランスで幼少時代を過ごした施主に馴染みのあるフランス語で「Pente」と名付けている。